#36【詩】itself
気づけばどこにも見当たらず。
遠く、遠く、地平線の向こう、太陽のなかに溶けてしまったのか。
はたまた底なしの谷底の奥深く、散り散りばらばらになったのか。
それとも深海の粟粒と混ざり合って、ブクブク空に蒸発してしまったか。
残っているのは、まっさらなさら地のみ。
もともと最初はなにも持っていなかったのだ。
ああ、なんだ元に戻ったのか。
いや、しかし時は進んでいるようだ。
では、なぜなんにも無くなったのか。
どうやら必要がなくなったらしい。
その圧倒的なこだわりとか、
いちいち漏れる溜息とか、
一瞬で消える薄っぺらい感情とか。
ばっさばさ棄ててしまったのだ。
するとどうだ。
光に透かされて煌めくそれがはっきりと見えるのだ。
埃や曇りもすっかり取り除かれたようだ。
なんだ、最初からそこにあったのか。
それならもう探す必要はないではないか。
「生きる」とは決して滑稽な演出ではなかった。
まさにそのものでしかないのだ。
Photo@Airplane,From Chile,Santiago(チリ、サンティアゴ、飛行機の中から)