#44【詩】That day Ep2. ~暗号解読~
それは流星のごとく
人生を一瞬ですり抜けた
覚悟なんて間に合わず
こんなアドリブ望んでないよと
電話の向こうでうごめく
彼のコトバはしばらく宙を舞って
幾度もその暗号を反芻しては
理解する寸前で足止めくらい
そろそろ小芝居はやめようと
冷静が現実に引き戻した
“彼 女 ガ 死 ン ダ”
暗号は
体中の血流と混ざって駆け巡り
鼓動は大袈裟に振舞って
思考は南京錠で閉ざされる始末
“彼 女 ガ 死 ン ダ”
そろそろ咀嚼した暗号を
理解の粒として摂取する覚悟をし
巻き戻すことをあきらめて
鉛色の冬空に無声でつぶやいた
“彼 女 ガ 死 ン ダ”
耳奥で響きこだまする現実は
あまりに現実味に欠けていて
運命の演出を憎む間もなく
人生の儚さを悟ったふりをした
“彼 女 ガ 死 ン ダ”
この感情を必死に検索するも
かつて味わったことのない新種のそれで
急に生きることが億劫に感じ
置き場所に困った無数の後悔
“彼 女 ガ 死 ン ダ”
全て消化吸収されるまでに
途方に暮れる距離を心は行き来し
やっと鎖から解き放たれた今
暗号解読インプット完了
“彼 女 ガ 死 ン ダ”
命は最後に宙で点滅し
まぶたの裏には自責の烙印
喪失の海原に呆然と佇み
悔恨が足元に降り積もる
Photo@Mexico(メキシコ、San miguel de allende)